今年の冬、ニュースやテレビの天気予報で「顕著な大雪に関する気象情報」という言葉を何度も耳にしていませんか。北陸地方を中心に記録的な大雪が続き、石川県や福井県、新潟県では立て続けにこの情報が発表されています。
「顕著な大雪」という言葉、数年前まであまり聞かなかったような気がする…そんな違和感を持っている方も多いのではないでしょうか。実はその感覚は正しくて、この表現は比較的新しい防災情報なのです。
「どんな基準で発表されるの?」「大雪警報とどう違うの?」「聞いたときに何をすればいいの?」そんな疑問を解消するために、公式情報をもとにわかりやすく解説していきます。
「顕著な大雪に関する気象情報」とは何か
気象庁の公式定義によると、「顕著な大雪に関する気象情報」は、重大な災害の発生する可能性が高まり、一層の警戒が必要となるような短時間の大雪となることが見込まれる場合に発表される気象情報です。
もう少しかみ砕いて言えば、「雪の降るスピードが速すぎて、除雪作業が追いつかず、大規模な交通障害が発生する可能性が極めて高い状況」を知らせるものです。いわば「記録的短時間大雨情報」の雪バージョンとも言えます。
この情報が発表されたときは、短い時間のうちに一気に積雪が増え、道路が通れなくなったり、車の立ち往生が発生したりする危険性が高まっています。
なぜこの情報が生まれたのか:2018年福井豪雪の教訓
「顕著な大雪に関する気象情報」が作られた背景には、2018年2月に発生した福井豪雪の苦い経験があります。
国道8号で約1,500台が立ち往生
2018年2月6日から7日にかけて、福井県嶺北地方は記録的な大雪に見舞われました。福井市では37年ぶりに積雪が140cmを超え、1981年の「五六豪雪」以来の大雪となりました。
この大雪により、国道8号では約1,500台もの車両が立ち往生。解消までに66時間以上を要する大災害となりました。北陸自動車道も通行止めとなり、福井県は完全に陸の孤島状態に。スーパーから食料品が消え、医療物資が不足し、多くの製造現場が休業を余儀なくされました。
さらに悲しいことに、雪に埋もれた車の中で一酸化炭素中毒により命を落とす方も出てしまいました。
従来の情報発信の限界
この災害を受けて、気象庁は大雪に関する情報発信の改善を迫られました。それまでの大雪に関する防災情報は「大雪注意報」「大雪警報」「大雪特別警報」という段階しかなく、短時間に急激に積もる「ドカ雪」の危険性を即座に伝える仕組みが不十分だったのです。
大雨の場合は「記録的短時間大雨情報」があり、危機的状況を強いメッセージで伝えることができました。しかし大雪にはそのような情報がなく、各気象台によって表現にバラつきがあったため、住民に危機感が十分に伝わらないという課題がありました。
運用開始の経緯:2018年試験運用から2021年本格化へ
段階的な導入の流れ
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2018年12月 | 北陸4県(新潟・富山・石川・福井)で試験運用開始 |
| 2019年11月 | 北陸4県+山形県・福島県(会津地方)で正式運用開始 |
| 2021年1月7日 | 富山県で初の「顕著な大雪に関する気象情報」を発表 |
| 2021年12月 | 近畿3府県(滋賀・京都・兵庫)、中国4県(鳥取・島根・岡山・広島)に拡大 |
| 2024年12月 | 岐阜県(関ケ原町付近)に拡大 |
2021年1月の北陸大雪では、またしても北陸自動車道で最大約1,500台の立ち往生が発生。2018年の教訓が十分に活かされなかったことが問題視されましたが、同時に「顕著な大雪に関する気象情報」の必要性も再認識される結果となりました。
発表基準はどうなっている?地域別の目安
基本的な発表基準
気象庁によると、「顕著な大雪に関する気象情報」は以下の条件を満たす場合に発表されます。
発表の目安(おおむねの基準)
| 時間 | 降雪量 |
|---|---|
| 3時間 | 20〜25cm以上 |
| 6時間 | 30〜40cm以上 |
この降雪を観測し、さらにその後も警報級の降雪が続くと予想される場合に発表されます。ポイントは、単に大量の雪が降っただけでなく、「この先も降り続ける」という予測がセットになっていることです。
地域ごとに異なる基準
実際の発表基準は、各地域の過去の交通障害事例を分析して設定されています。つまり、その地域で「この量の雪が短時間に降ると、実際に大規模な車両滞留が発生した」という実績データに基づいています。
そのため、同じ北陸地方でも観測地点ごとに細かな数値は異なりますが、おおむね上記の目安が基準となっています。
対象地域一覧(2025年12月現在)
北陸地方(4県)
- 新潟県
- 富山県
- 石川県
- 福井県
東北地方(2県)
- 山形県
- 福島県(会津地方のみ)
近畿地方(3府県)
- 滋賀県
- 京都府
- 兵庫県
中国地方(4県)
- 鳥取県
- 島根県
- 岡山県
- 広島県
東海地方(1県)
- 岐阜県(関ケ原町付近のみ)
注目すべき点は、太平洋側の大雪は対象外ということです。この情報は日本海側の冬型の気圧配置による大雪に特化しており、南岸低気圧による関東などの大雪には別の対応がなされています。
大雪注意報・警報・特別警報との違い
防災気象情報の段階
大雪に関する防災気象情報は、以下のような段階で発表されます。
| 情報の種類 | 発表のタイミング | 内容 |
|---|---|---|
| 早期注意情報(警報級の可能性) | 5日先まで | 警報級の大雪の可能性を予告 |
| 大雪注意報 | 数時間〜1日前 | 注意が必要なレベルの大雪 |
| 大雪警報 | 3〜6時間前 | 重大な災害のおそれ |
| 顕著な大雪に関する気象情報 | 発生中〜継続予想時 | 短時間の急激な大雪、大規模な交通障害の危険 |
| 大雪特別警報 | まれ | 数十年に一度の大雪 |
「顕著な大雪」の位置づけ
「顕著な大雪に関する気象情報」は、大雪警報よりもさらに切迫した状況を伝えるものです。ただし、これは「特別警報」とは異なり、あくまで「気象情報」という形式で発表されます。
大雪特別警報は「積雪の深さ」を基準としていますが、顕著な大雪に関する気象情報は「短時間の降雪量」を基準としています。つまり、総積雪量ではなく、「今まさに猛烈なスピードで雪が降っている」ことを伝える情報なのです。
発表実績から見る信頼性
気象庁によると、これまでの発表時の状況を振り返ると、その多くで実際に大規模な車両滞留が発生しているとのこと。大規模な交通障害との相関が高い、信頼性のある情報となっています。
2026年1月の北陸大雪:実際の発表事例
記録的な寒波の襲来
2026年1月、日本列島には今季最強・最長の寒波が襲来しました。上空5,500m付近にはマイナス42℃以下という数年に一度レベルの強烈な寒気が南下し、北陸地方を中心に記録的な大雪となりました。
2026年1月の「顕著な大雪に関する気象情報」発表履歴(一部)
| 日時 | 発表地域 | 観測内容 |
|---|---|---|
| 1月21日 22時06分 | 石川県 | 金沢市で6時間に20cmの降雪 |
| 1月22日 | 福井県 | 大規模な交通障害のおそれ |
| 1月24日 | 福井県 | 継続的な強い降雪 |
| 1月25日 | 石川県・鳥取県 | 大規模な交通障害のおそれ高まる |
SNSでの反応
SNS上では、この「顕著な大雪」という言葉に対して様々な声が上がっています。
「ここ数日、『顕著な大雪』という言葉を毎日ニュースで聞いている気がする」「一瞬で40cm積もった…家の周りだけで3台スタックしている」「雪かきで全体力を持っていかれた」といった切実な声が多く見られます。
特に北陸地方では、「コレが北陸のドカ雪」「明日の出勤が大変」など、生活への直接的な影響を訴える投稿が相次いでいます。
「顕著な大雪」が発表されたらどうする?実践的な対策
最重要:不要不急の外出を控える
気象庁は明確にこう呼びかけています。「顕著な大雪に関する気象情報が発表された地域では、不要不急の外出を控えていただき、また他の地域からもその地域に向かわないことが肝要です」
これは単なる注意喚起ではなく、実際に大規模な交通障害が発生する可能性が極めて高いという警告です。
車の運転を避ける理由
短時間に大量の雪が降ると、以下のような事態が発生します。
除雪が追いつかない どれだけ除雪体制が整った国道や高速道路でも、1時間に10cm以上のペースで雪が降り続けると、除雪作業が追いつきません。
スタック車両が発生 チェーンを装着していない大型車や、雪道に慣れていないドライバーの車がスタック(発進不能)すると、それを先頭に大規模な立ち往生が発生します。
解消に長時間かかる 一度立ち往生が発生すると、救出作業には数時間から場合によっては数十時間かかります。その間、車内で過ごすことになり、燃料切れや一酸化炭素中毒のリスクが高まります。
やむを得ず運転する場合の備え
どうしても車で移動しなければならない場合は、以下の装備を必ず車内に用意してください。
必須装備
| カテゴリ | 具体的なもの |
|---|---|
| 冬用タイヤ・チェーン | スタッドレスタイヤ装着必須、タイヤチェーンも携行 |
| 除雪用具 | スコップ、軍手、ゴム手袋、長靴 |
| 防寒対策 | 防寒着、毛布、カイロ |
| 非常食・飲料 | 水、パン、チョコレートなど日持ちするもの |
| バッテリー関連 | ブースターケーブル、モバイルバッテリー |
| その他 | 牽引ロープ、簡易トイレ、懐中電灯 |
重要ポイント:マフラー周りの除雪
立ち往生中にエンジンをかけて暖を取る場合、マフラーが雪に埋まらないようこまめにマフラー周りを除雪してください。マフラーが塞がると排気ガスが車内に逆流し、一酸化炭素中毒を引き起こします。2018年の福井豪雪でも、この一酸化炭素中毒により尊い命が失われました。
自宅での備え
大雪が予想される場合は、外出できなくなることを前提に備えましょう。
事前に準備しておくもの
- 食料品:最低3日分、できれば1週間分
- 飲料水:1人1日3リットルを目安に
- 灯油・ガソリン:暖房用燃料は満タンに
- 常備薬:持病のある方は余裕を持って
- カセットコンロ・ボンベ:停電に備えて
- 懐中電灯・電池:停電対策
- モバイルバッテリー:充電しておく
物流が止まる前に
大雪で高速道路や国道が通行止めになると、物流がストップします。スーパーやコンビニから食料品が消えることもありますので、寒波が来る前に買い物を済ませておきましょう。
屋根の雪下ろしと落雪への注意
短時間に大量の雪が積もると、屋根からの落雪も危険です。軒先での作業時は頭上に注意し、できれば複数人で作業してください。また、屋根の雪下ろしは転落事故のリスクがあるため、無理はせず、可能であれば専門業者に依頼しましょう。
気象庁の「今後の雪」を活用しよう
気象庁では、大雪への備えに役立つ情報として「今後の雪(降雪短時間予報)」を公開しています。
「今後の雪」でできること
- 24時間前から現在までの積雪の深さと降雪量を確認
- 6時間先までの予報を地図上で確認
- 道路や鉄道の情報と重ね合わせて表示
出かける前に「今後の雪」を確認することで、移動ルートの変更や予定の見直しを検討できます。
気象庁「今後の雪」 https://www.jma.go.jp/bosai/snow/
JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)にも注目
近年、「JPCZ」という言葉もよく聞くようになりました。これは「日本海寒帯気団収束帯」の略で、北陸地方の大雪をもたらす重要な現象です。
JPCZとは
シベリア大陸から流れ込む冷たい風が、朝鮮半島北部の白頭山脈によって一度二つに分かれ、日本海上で再び合流することで形成される「雪雲が発達しやすいライン」のことです。
このJPCZが北陸地方を直撃すると、短時間で急激に積雪が増える「ドカ雪」が発生します。天気予報で「JPCZの影響で…」という表現があったら、特に警戒が必要です。
まとめ:「顕著な大雪」は命を守るための進化
「顕著な大雪に関する気象情報」という聞き慣れない言葉に戸惑う方も多いかもしれません。しかし、これは2018年の福井豪雪での悲惨な経験を教訓に、より明確に危機感を伝え、住民の命を守るために生まれた情報です。
この記事のポイント
- 「顕著な大雪」は短時間の急激な降雪を知らせる情報:除雪が追いつかず、大規模な交通障害が発生する危険性が高い状況
- 発表基準はおおむね3時間で20〜25cm、6時間で30〜40cm:さらにその後も降り続く予想がある場合
- 2018年福井豪雪がきっかけ:約1,500台の立ち往生、死者も発生した大災害の教訓
- 2019年から運用開始、2021年に初発表:現在は北陸・東北の一部・近畿北部・中国地方で運用
- 発表されたら不要不急の外出は控える:大規模な立ち往生に巻き込まれるリスクが高い
「顕著な大雪」という言葉は、怖がらせるためのものではありません。「今すぐ行動を変えてほしい」という気象庁からの切実なメッセージです。この情報が発表されたときは、ぜひ予定を見直し、安全を最優先に行動してください。
大雪は自然現象ですが、被害を最小限に抑えることは私たちの選択次第です。正しい情報を知り、適切に備えることで、この冬を安全に乗り越えましょう。
参考リンク
気象庁公式
- 大雪について(気象庁) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/snow/snow.html
- 大雪・暴風雪に関する最新の防災気象情報 https://www.jma.go.jp/jma/bosaiinfo/snow_portal.html
- 今後の雪(降雪短時間予報) https://www.jma.go.jp/bosai/snow/
政府広報
- 雪予報の確認に!気象庁「今後の雪」で6時間先までの雪の予報をチェック! https://www.gov-online.go.jp/article/202112/entry-10258.html
最終更新:2026年1月25日

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