TOTOが浴槽の受注を停止——イラン情勢が引き起こす2026年の建材危機

⚠️ この記事は2026年4月時点の情報です。状況は刻々と変化するため、最新情報は各メーカー公式サイトでご確認ください。

2026年春、住宅業界に異変が起きています。TOTOがユニットバスの新規受注を停止し、LIXILが供給条件の調整を予告。大手塗料メーカーはシンナー製品を50〜75%値上げし、現場では1缶単位の数量制限まで起きています。背景にあるのは、中東・イランをめぐる国際情勢の急変です。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が、遠く離れた日本の住宅市場を直撃しています。

目次

2026年春、建材市場で何が起きているのか

異変の始まりは2026年2月末でした。米国とイスラエルがイランを攻撃し、イランが反撃。ホルムズ海峡の通航が事実上停止しました。日本に向けて毎日140隻前後が行き交っていたタンカーがほぼゼロになりました。

日本の原油輸入の90%超はホルムズ海峡を経由しています。この海峡が止まるということは、日本の石油調達が根幹から揺らぐことを意味します。石油はガソリンや燃料だけではありません。樹脂・プラスチック・塗料の溶剤・接着剤など、住宅を構成するあらゆる素材の原料でもあるのです。

問題が顕在化するまでに約1〜2カ月かかりました。3月中旬ごろから塗料業界でシンナー不足が深刻化し、4月に入るとTOTOとLIXILが相次いで供給への影響を公表。建材市場はいま、複合的な供給危機の渦中にあります。

TOTOは新規受注停止、LIXILは供給調整を発表

最も衝撃的だったのは、TOTOの発表です。

2026年4月13日、TOTOは取引先向けの通知で、システムバス・ユニットバス・トイレユニットの全シリーズについて、新規受注を同日より当面停止すると発表しました。再開の目途は立っていないとされています。

停止の理由は、浴槽のコーティング材や壁・天井フィルムの接着剤に使われる有機溶剤の調達が困難になったためです。これらはナフサ(石油を精製する過程で得られる素材)から作られており、ホルムズ海峡の封鎖で供給が途絶えた結果、製造の一部工程が止まりました。

なお、トイレ単体(衛生陶器)については受注を継続しています。ただし、ウォシュレット等の一部製品には出荷上限が設けられているとの情報もあり、通常通りとは言い切れない面もあります。すでに受注済みの案件については、生産・出荷を継続する方針です。

一方のLIXILは、2026年4月10日付のプレスリリースで状況を公表しました。石油由来原材料(樹脂等)の供給制限や物流コストの上昇を背景に、今後の情勢変化に伴って供給条件(価格・納期・数量等)を調整する可能性があるとしています。現時点での受注停止は確定していませんが、状況次第では変わる可能性があります。

タカラスタンダードも4月13日、情勢が長期化した場合に一部製品の納期・供給数量・価格に影響が及ぶ可能性を示しました。同社の主力であるホーロー素材は石油化学依存度が相対的に低いため、現時点では即時停止には至っていません。ただし、予断を許さない状況であることに変わりはありません。

塗料・シンナーが現場から消えている

浴室・設備だけでなく、塗装の現場でも深刻な影響が出ています。

日本ペイントは2026年3月19日発注分から、建築用シンナー製品を75%値上げしました。関西ペイントは4月2日に発表し、4月13日出荷分から50%以上の値上げを実施。さらに前年同月の出荷実績を上限とする出荷統制も合わせて導入しています。

塗料用シンナーの主原料もナフサです。シンナーは塗料を薄めるだけでなく、使用後の器具を洗浄する際にも欠かせない素材です。これが入手困難になると、塗装工事そのものが止まります。

現場では業者1社あたりの数量制限も起きており、外壁塗装や屋根塗装の工期に影響が及んでいます。転売市場では通常価格の3〜4倍で取引される事例も報告されています。外壁塗装を予定している方は、担当業者に資材調達の現状を確認しておくことをお勧めします。なお、油性塗料の代わりに水性塗料を使う工法に変更することで、シンナー不足の影響を回避できる場合もあります。

影響は大手2社にとどまりません。業界全体でシンナー原料の調達が困難になっているため、他の塗料メーカーも今後、値上げや出荷制限を打ち出す可能性があります。断熱材や防水材など、他の石油化学系建材にも影響が波及しつつあります。

なぜ建材が止まるのか——ナフサと国際情勢のつながり

なぜ遠い中東の情勢が日本の浴槽やシンナーに影響するのか。少し整理してみます。

起点は2026年2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃です。イランが反撃し、革命防衛隊がホルムズ海峡の通航禁止を警告。タンカーへの攻撃が発生したことで、大手海運会社や日本郵船・川崎汽船・商船三井も海峡通航を全面停止しました。4月8日に停戦合意が成立しましたが、海峡の制限は続いており、4月12〜13日には米国が対イランの海上封鎖を宣言するという新展開も生じています。

日本の原油輸入の90%超がホルムズ海峡を経由しています。喜望峰(アフリカ南端)を迂回するルートに切り替えると、航海日数は大幅に延長します。タンカーの用船料は危機前の約3倍に急騰し、海上保険料は4倍以上になりました。

最も影響を受けているのが「ナフサ」です。石油精製の過程で得られるこの物質は、エチレン・プロピレンなど石油化学製品の出発点です。ここから樹脂、プラスチック、接着剤、溶剤などが作られます。TOTOの浴槽コーティング材、LIXILの樹脂製品、塗料のシンナーは、すべてナフサ由来の素材を使っています。

特定の溶剤が一種類でも欠けると完成品が作れないという製造の構造上、今回は価格高騰だけでなく、TOTOのように受注を止めるという判断が速い段階で出てきました。政府は備蓄と代替調達で数カ月分は確保できるとしていますが、品目ごとの川下でのボトルネックが先に顕在化したのが実態です。

さらに円安とエネルギーコストの上昇が追い打ちをかけています。輸入コストが高騰する中で喜望峰迂回の割増分が乗ってくるため、調達できたとしても価格は大幅に跳ね上がります。「入ってくるだけましだが、コストが吸収できない」という業者の声も出ています。

過去の建材危機と今回の違い

建材の供給危機は今回が初めてではありません。2021年には木材価格が急騰する「ウッドショック」が起き、2022年にはロシア・ウクライナ侵攻によって鉄鋼や一部樹脂の調達が混乱しました。

ウッドショックのときは、主に価格の急騰と納期の長期化が問題の中心でした。コストを受け入れれば調達は可能で、供給が完全に止まったわけではありませんでした。1〜2年かけて代替ルートの確保や生産量の調整で徐々に緩和しました。

2022年のロシア・ウクライナ問題による混乱も、鉄鋼・一部原材料の価格高騰が中心で、数カ月で代替調達が進んで影響は縮小しました。

今回が過去と異なる点は、ナフサ由来の石油化学製品という広範な素材が同時に影響を受けているうえ、物理的な受注停止が封鎖からわずか6週間という早い段階で表面化したことです。また、中東情勢の解決は外交・軍事的な要因に左右されるため、過去の経済的要因が中心だった危機と比べて、収束のタイミングが読みにくいという特徴があります。

業界団体や建設会社の間では、代替素材の開発・調達や在庫の前倒し確保の動きが広がっています。ただし即効性のある解決策は乏しく、原材料の供給が回復するまで待つという状況が続いています。

施主が今できること、そして先が見えない見通し

この問題で多くの方が気にするのは「いつ解決するのか」という点でしょう。ただ、現時点でその問いに答えられる人はいません。

ホルムズ海峡の通航が再開されれば、数カ月で状況は改善に向かう可能性があります。一方、停戦後も情勢が不安定であること、米国が海上封鎖を宣言するという新たな局面も出ていることを踏まえると、楽観的な見通しは立てにくい状況です。

そうした状況で、施主として今できることを整理します。

**すでに契約・発注が完了している案件**については、工務店やリフォーム会社に既受注分の納品が保証されているかを確認してください。メーカー各社は既受注分の生産・出荷を継続する方針を示していますが、念のため書面での確認をお勧めします。

**これからメーカーを選ぶ段階**であれば、複数のメーカーを比較したうえで代替品の検討も視野に入れましょう。ホーロー浴槽を主力とするタカラスタンダードは今回の影響が比較的小さいとされています。外壁塗装では水性塗料への変更でシンナー不足を回避できる場合があります。

**工事の請負契約書**に価格改定条項がある場合、資材高騰を理由に追加費用が請求される可能性があります。契約内容を改めて確認しておきましょう。

この問題には、今のところ「いつ正常化するか」という答えがありません。中東情勢の改善次第で早期解決もあり得ますが、長期化すれば建材・設備の価格体系そのものが変わる可能性もあります。不確実な状況の中で、自分の工事が今どの段階にあるかを正確に把握し、早めに工務店・設計者と話し合うことが、施主にできる最善の行動です。

今後の動向として注目すべきポイントは、ホルムズ海峡の通航再開の有無です。停戦合意の維持・拡大や外交交渉の進展があれば、タンカーの通航再開→ナフサ供給の回復→製造ライン再開という流れが生まれます。逆に情勢がさらに悪化すれば、影響が今以上に広がる可能性もあります。メーカー各社の公式サイトや業界ニュースを定期的に確認しながら、状況の変化に備えることをお勧めします。

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橙咲 華のアバター 橙咲 華 トウサキ ハナ

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日韓ハーフ15歳
Kカルチャー&謎を解説
所属:Loveforever
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