配信を見て、友達のプレイ動画を見て、「自分もやってみたい」と思った。そこで検索して、初めて気づく。このゲーム、パソコンでしか遊べないらしい、と。
『めっちゃカメレオン』は2026年6月10日にSteamで出たばかりのゲームだ。それが発売から16日で売上1000万本を突破した。個人開発としては前例のない記録である。体に絵を描いて背景に溶け込む「お絵描きかくれんぼ」という手軽さが受け、にじさんじやぶいすぽっ!の配信者がこぞって遊んだことで一気に広まった。
これだけ軽くて子供でも楽しめそうなゲームなら、スイッチやスマホで出ていて当然だろう。多くの人がそう思っている。だが現実は違う。なぜパソコン版しかないのか、そして待っていればスマホ版やスイッチ版は出るのか。結論から言えば、いちばん可能性が高いのは「Switch2版」だ。なぜそう言えるのか、根拠をたどりながら見ていく。
※この記事は2026年6月末時点の情報をもとにしています。移植や対応プラットフォームの状況は変わる可能性があります。最新情報は開発元の公式X(@lemorion1224)やSteamストアページでご確認ください。
「スイッチで出てそう」に見えるのに、なぜパソコンだけなのか

まず、多くの人が抱く違和感を言葉にしておきたい。このゲームは、いかにも家庭用ゲーム機で出ていそうな顔をしている。
ルールは単純で、鬼チームと隠れチームに分かれるだけ。隠れる側は真っ白な自分の体にペイントツールで絵を描き、ポーズを取って壁やオブジェクトに擬態する。グラフィックはポップで、血なまぐさい描写もない。価格も790円と安い。友達や家族とワイワイ遊ぶパーティーゲームの空気をまとっている。マリオパーティーやスプラトゥーンの隣に並んでいても、何の違和感もなさそうに見える。
だからこそ、検索する人の頭にはこんな前提がある。「これだけ流行ってて、こんなに軽いゲームなら、スイッチ版もスマホ版も普通にあるでしょ」。実際、X上やQ&Aサイトには「スマホ版ありましたけど、これできますか?Switch2では来ますか?」といった質問が並んでいる。期待は自然なものだ。
しかし、その期待を裏切るのが開発体制の実態だ。『めっちゃカメレオン』をつくったのは、たった2人のチームである。企画とグラフィックを担当するレモリオン氏と、システムを担当するはがねいろ氏。大手メーカーが何十人もかけてつくったゲームではない。開発期間も、前作の資産を流用したことで実質2ヶ月ほどだったという。ゲームの見た目の大きさと、つくっている人たちの数が、まったく釣り合っていない。ここに「なぜパソコンだけなのか」の答えの半分がある。
もう半分は、操作方法にある。このゲームは現状、キーボードとマウスにしか対応していない。ゲームパッドは使えない。理由を考えればすぐにわかる。体に自由に絵を描く。それがこのゲームの肝心な部分だが、マウスのように細かく動かせる入力装置があって初めて成立する。スティックやボタンで思った通りの線を引くのは難しい。つまりこのゲームは、構造的にパソコン向きに生まれているのだ。
スマホ版・スイッチ版は「存在しない」。今ある”スマホ版”の正体

はっきりさせておく。2026年6月末の時点で、『めっちゃカメレオン』の公式なスマホ版(iOS/Android)は存在しない。初代スイッチ版も、Switch2版も、PS5版もXbox版もない。遊べるのはパソコン(Steam)だけだ。開発元からの移植の予定や発表も、この時点では出ていない。
ところが、ここで多くの人がつまずく。App StoreやGoogle Playで「めっちゃカメレオン」を検索すると、それらしいアプリが出てくることがあるのだ。「あれ、スマホ版あるじゃん」と思ってダウンロードしたくなる。
これは、ほぼ間違いなく偽物だ。開発元とは無関係の人物が、流行に便乗してつくった非公式アプリである。手を出してはいけない。
実害も出ている。「App Storeだから安心していたのに、子供がお金を払って買ったら全然違うゲームだった」。ネット上にはそんな被害報告が上がっている。報道でも警告されている手口だ。パソコン向けの有料ゲームを、スマホ向けに無料で配信しているように見せかける。そうしてダウンロードした人の個人情報を盗む。2024年に『パルワールド』がヒットしたときにも、まったく同じ手口の偽アプリが出回った。流行ゲームの宿命のようなものだ。
開発者本人も、公式を装ったSNSアカウントがあるとして注意を呼びかけている。本物のアカウントはレモリオン氏(@lemorion1224)とはがねいろ氏(@haganeiro_fn)だけ。公式Discordも、Steamストアページに書かれているものだけが本物だ。スマホで見つけた「めっちゃカメレオン」は、まず疑ってかかってほしい。
では、本物のスマホ版やスイッチ版を待つべきなのか。ここからが本題になる。
開発者は移植について何と言っているのか

移植の可能性を占ううえで、いちばん確実な手がかりは開発者本人の言葉だ。レモリオン氏は大ヒット後、複数のメディアの取材に答えている。そこでの発言を、正確に拾っておきたい。
2026年6月19日、Game*Sparkがレモリオン氏のインタビューを公開した。そこで氏は、想定以上の反響への驚きや、今後もアップデートを続けていく意気込みを語っている。そして最後に、こう付け加えた。「近いうちにPC以外にも出る……かも?」。
「PC以外にも出る……かも?」。期待したくなる一言だ。だが、よく読めば、これは何も約束していない。「かも?」という語尾は、決定でも予告でもない。どのプラットフォームに、いつ出すのか、具体的なことは一切言っていない。ファンサービス的なほのめかしの域を出ていないと見るのが冷静だろう。
では1000万本を達成した後はどうか。6月30日公開の電ファミニコゲーマーのインタビューでは、レモリオン氏がマルチプラットフォーム化の予定を直接聞かれている。その答えは、こうだった。「詳しい情報はお伝えできません」。
これも実に微妙な言い回しだ。「予定はない」と否定したわけではない。かといって「出します」と認めたわけでもない。何か動いているのか、それとも単に決まっていないだけなのか、外からは判断できない。少なくとも、近々の発表をにおわせるような前のめりさはない。
そして、移植を考えるうえで見逃せない発言がもう2つある。1つは、レモリオン氏が自身のXで「パブリッシャーは現在募集していません」と明言していること。もう1つは、次回作について「『ペンギンホテル3』を制作予定」と語っていることだ。後者については、移植より自社の新しいゲームづくりに気持ちが向いていることがうかがえる。
このパブリッシャーの話が、なぜ重要なのか。それを理解するには、過去の似たゲームたちがどうやって家庭用機に出ていったかを見る必要がある。
過去のヒットインディーは、どうやってスイッチに来たか
個人や少人数のチームがつくったゲームが、パソコンで爆発的に売れる。その後、スイッチやスマホに移植される。あるいは、されない。このパターンには、ある程度の法則がある。最近の事例を並べてみると、移植の成否を分けるものが見えてくる。
| 作品 | パソコン発売 | スイッチなどへの移植 | パブリッシャー |
|---|---|---|---|
| 8番出口 | 2023年11月 | スイッチ版を約5ヶ月後に発売。その後PS・Xbox・Switch2・スマホ版まで展開 | あり(PLAYISM) |
| Among Us | 2018年 | ブレイク後にスイッチ版を発売(ヒットから数ヶ月) | 自社 |
| Vampire Survivors | 2022年 | 約10ヶ月後にスイッチ版。スマホ版はもっと早い | 自社 |
| Content Warning | 2024年4月 | 約2年後に全機種へ同時展開 | 自社 |
| Lethal Company | 2023年10月 | 移植なし(パソコン専用のまま) | なし |
| Liar’s Bar | 2024年10月 | 移植なし(ゲームパッド未対応) | なし |
この表から読み取れることは、思いのほかはっきりしている。
移植が早く、しかも広い範囲に展開した作品には、たいていパブリッシャーがついている。象徴的なのが『8番出口』だ。地下通路で異変を探すだけのシンプルなゲームが、PLAYISMというパブリッシャーと組んだ。その結果、発売からおよそ5ヶ月でスイッチ版を出し、その後はプレイステーション版もXbox版もSwitch2版も実現した。さらにはスマホ版や実写映画化にまで広がっている。個人開発の作品が、パブリッシャーの力を借りて一気にあらゆる場所へ展開した好例だ。日本のファンが『めっちゃカメレオン』に「8番出口みたいにスイッチで出してほしい」と期待するのも、この前例があるからだ。
一方で、パブリッシャーをつけない作品は事情が違う。開発者が自分たちだけで運営している場合、移植に時間がかかるか、そもそもパソコンのままにとどまる傾向がある。『Lethal Company』も『Liar’s Bar』も大ヒットしながら、家庭用機には来ていない。とくにオンラインで複数人が遊ぶタイプのゲームは、移植のハードルが高い。あの『Among Us』ですら、スイッチに出すときには家庭用機向けの簡易コミュニケーション機能を新しくつくる必要があった。それが手間だったと開発者が明かしている。ただ移植すれば済む、という単純な話ではないのだ。
ここで『めっちゃカメレオン』の状況に戻る。開発者は「パブリッシャーは現在募集していません」と言っている。つまり今のところ、移植をいちばん加速させる選択肢を、自ら取っていない。しかも2人しかいないチームで、次回作の構想も動いている。リアルタイムで全員の落書きを同期させる処理は、もともと負荷が高い。テスト段階でも「複数人が同時に描くと重くなった」と開発者が語るほどだ。これを別のハードに移すのは、見た目以上に骨が折れる作業になる。
さらに、このチームの過去作はすべてパソコン専用でリリースされてきた。コンソール移植の実績はない。放っておけばパソコンのまま、という可能性も決して低くはない。これが、楽観だけではいられない理由だ。
それでもSwitch2版が最有力だと考える理由

ここまで読むと、移植には悲観的な材料が多いように見えるかもしれない。それでも、もしどこかに移植されるとしたら、いちばん可能性が高いのはSwitch2版だ。そう考えるには、いくつかの根拠がある。
最大の理由は、操作の問題が解ける見込みがあることだ。さきほど、このゲームはマウスがないと成立しにくいと書いた。スティックやボタンでは細かい絵が描けない。これが家庭用機移植の最大の壁だった。ところがSwitch2には、Joy-Con2をマウスのように動かして操作する機能が搭載されている。机の上で滑らせれば、パソコンのマウスに近い感覚で線を引ける。お絵描きが核心のこのゲームと、Switch2のマウス機能は、不思議なほど噛み合う。ファンの間で「Switch2で出ないなら、あのマウス機能は何のためにあるんだ」という声が上がるのも無理はない。
逆に言えば、初代スイッチは分が悪い。マウス機能がないため絵を描く操作に難があり、処理性能も限られる。複数人の落書きをリアルタイムで同期させる重い処理を、初代スイッチでなめらかに動かせるかは怪しい。出るとすれば初代を飛ばしてSwitch2、と考えるのが自然だ。
2つ目の根拠は、需要の大きさだ。このゲームは発売の時点でウィッシュリストが60万件あり、今では約200万件にまで膨らんでいる。X上には「スイッチで出して」「Switch2で息子と遊びたい」という声があふれている。家庭用機で出せば売れることは、誰の目にも明らかだ。1000万本を売ったゲームが、家庭用機という巨大な市場を放置し続ける理由はない。ビジネスとして見れば、いずれ何らかの形で家庭用機に出すのが合理的だ。
3つ目は、開発者が移植を否定していないことだ。「PC以外にも出る……かも?」「詳しい情報はお伝えできません」。どちらも歯切れは悪いが、扉を閉じてはいない。決まっていないだけで、頭の片隅にはあるのかもしれない。少なくとも「絶対に出さない」という姿勢ではない。
ただし、ここで冷静になっておきたいことがある。「最有力」というのは「すぐ出る」という意味ではない。むしろ短期間での実現には懐疑的だ。パブリッシャーを募集していない以上、移植を一気に進める体制はまだない。次回作も控えている。過去の事例を見ても、パブリッシャーがついた『8番出口』ですら、スイッチ版が出るまで5ヶ月かかった。パブリッシャーのない作品なら、1年近く、あるいはそれ以上かかった例も珍しくない。仮に動き出すとしても、数ヶ月から1年単位の話になると見ておくのが現実的だ。明日にも発表される、と期待して待ち構えるような性質のものではない。
何が起きたら、その予想は変わるのか

予想はあくまで予想だ。状況が動けば、見立ても変わる。だから最後に、「これが起きたら移植が一気に近づく」というサインを挙げておきたい。続報を追うときの目印になるはずだ。
いちばんわかりやすいのは、パブリッシャーをめぐる動きだ。レモリオン氏が「パブリッシャーを募集します」と方針を変えたり、特定のパブリッシャーとの提携が発表されたりすること。『8番出口』がそうだったように、パブリッシャーがつけば移植は現実的なスケジュールに乗る。次に、任天堂の番組であるNintendo DirectやIndie Worldで紹介されること。ここで名前が出れば、ほぼ確定と見ていい。もう少し地味なサインとしては、Steamのストアページに「コントローラー対応」が追加されること。家庭用機はコントローラーで遊ぶのが前提だから、パッド対応の作業は移植の準備が始まった兆候かもしれない。そして当然、開発者のXで具体的なプラットフォーム名が出れば、それが何よりの答えになる。
今この瞬間にできるのは、偽アプリに手を出さず、本物のニュースを待つことだけだ。パソコンを持っているなら、790円で今すぐ遊べる。持っていないなら、もどかしいが、続報を待つしかない。お絵描きで隠れるというこの奇妙なゲームが、いつか自分の手元のゲーム機で遊べる日は来るのか。その答えを握っているのは、たった2人の開発者だ。彼らが次にどんな一手を打つのか、しばらくは目が離せない。

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