吉田響のシールの正体は?100枚超パワーテープの効果を解説

2026年2月22日の大阪マラソンで、ひときわ視聴者の目を引いたのが吉田響選手の全身に貼られた無数の黒い丸いシールでした。

「あの黒いシールは何?」「AI分析用のセンサー?」「疲労回復テープ?」——SNSでは放送直後から疑問の声が殺到し、Yahoo!知恵袋にもレース中にリアルタイムで複数の質問が投稿されるほどの注目を集めました。

結論から言うと、あのシールの正体はファイテン(Phiten)のパワーテープです。AIセンサーでも医療用デバイスでもありません。

この記事では、パワーテープとは何か、なぜ100枚以上も貼るのか、科学的な効果はあるのか、そして他のアスリートも使っているのかまで、徹底的に掘り下げます。

目次

吉田響が大阪マラソンで貼っていたシールの正体

吉田響選手が全身に貼っていた黒い丸いシールの正体は、**ファイテン株式会社が製造する「パワーテープ」です。直径約22mmの丸型で、粘着面に炭化チタン(アクアチタン=水溶化チタン)**をコーティングしたボディケアテープです。

計測機能は一切なく、センサーではありません。

レース後、サンベルクス陸上部の田中正直総監督は報道陣に対してこう説明しています。

「神経や筋肉に柔軟性を出すためのファイテンのテープです」「100枚以上貼っている。今朝6時に私の目の前で貼りました」

顔(こめかみ付近)、首、上半身、腕、足首、脚と文字通り全身にびっしりと貼られており、スタート地点での異様なシルエットは「ダルメシアンみたい」「草間彌生の作品」「耳なし芳一」とSNSで大きな話題になりました。

なお、吉田響選手はファイテンの公式契約アスリートではなく、あくまで個人的な愛用者です。

ファイテン パワーテープとは?3種類の違いと価格

ファイテンは1983年創業の京都発の日本企業で、「生体電流を整える」技術を軸にしたボディケア製品を展開しています。パワーテープは同社を代表するロングセラー商品で、世界累計21億マーク超を販売しています。

現在販売されているパワーテープは主に3種類あり、チタンの濃度と配合技術によってグレードが分かれます。

**パワーテープ(スタンダード)**は、粘着面に炭化チタンをコーティングしたエントリーモデルです。70枚入り770円(税込)で、1枚あたり約11円。1000枚入りの大容量パックもあります。

パワーテープX30は、アクアチタンを30倍濃度で含浸させた中級モデルです。ミクロチタンボールも配合されており、50枚入り1,100円(税込)で1枚約22円。

メタックステープは最上位モデルで、チタン・金・銀・白金・パラジウムの5種の金属を水溶化した「メタックス」技術を採用。形状は楕円形で、50枚入り1,980円(税込)、1枚約40円です。

仮に吉田響選手がスタンダードを100枚貼ったとすると費用は約1,100円、全てメタックスでも約4,000円程度。金銭的なハードルは意外なほど低いことがわかります。

また、競技会ではブランドロゴの表示規定があるため、ロゴなしの**「無地タイプ(For Athlete)」**も販売されています。全製品共通で撥水性があり、2〜3日貼りっぱなしが可能です。

パワーテープの効果に科学的根拠はあるのか

ここがこの話題の最も「答えがない」部分です。パワーテープの効果については、賛否両方の研究が存在します。

効果を示唆する研究

ファイテンが資金提供した研究では、一定の効果が報告されています。

京都府立医科大学とUCLAの共同レビュー論文(Rowlands et al., 2014年、Journal of Functional Biomaterials掲載)では、アクアチタンが海馬神経の膜電位を修飾し、疲労後のランニングエコノミー向上を示唆するデータが示されました。ただし論文自身も「さらなる研究が必要」と結論づけています。

また、京都府立大学の研究(Aoi et al., 2012年)ではアクアチタン処理した環境での睡眠でストレスが28.5%減少したとの報告があり、脳梗塞リハビリセンターとの共同検証(2022〜2023年)では83.8%の患者が筋緊張の変化を認識したとされています。

効果に懐疑的な研究

一方、独立した研究ではやや厳しい結果が出ています。

米国空軍士官学校が行った二重盲検実験(Foster et al., 2016年、Skeptical Inquirer掲載)では、48人にファイテンのネックレスまたは普通のロープを48時間着用させた結果、統計的に有意な差はなかったと結論づけられています。

さらに2011年には米国で集団訴訟が提起され、ファイテンは和解に応じています。「身体のエネルギーに影響する」「痛みを和らげる」といった広告表現が問題視されました。

つまり、どういうこと?

ファイテン支援の研究ではin vitro(試験管内)や動物実験レベルで一定の効果が示唆されますが、大規模な独立臨床試験は乏しいのが現状です。プラセボ効果の可能性は排除できません。

ただし、30年以上のロングセラーであること、累計21億マーク超の販売実績、多くのトップアスリートが継続使用していることも事実です。メーカー自身も「効果・効能」を明記せず、「リラックスサポート」「パフォーマンスサポート」という控えめな表現にとどめています。

効くか効かないかは、まさに「答えがない話」と言えるでしょう。

なぜ100枚以上?他の選手の使用枚数と比較

吉田響選手の「100枚以上」は、実はかなり異例の枚数です。

ファイテン担当の澤野宏大氏がNumber Webの取材に答えたところによると、トップ選手の通常の使用量は50〜60枚程度。過去の最大級でも150枚とのことで、吉田選手の100枚以上は通常の約2倍に相当します。

特に異例だったのが、こめかみや眉間付近など顔にまで貼っていた点です。通常のアスリートは首から下の筋肉・関節周りに貼ることが多く、顔面への貼付は極めて珍しい。SNSで「ダルメシアン」「草間彌生」と話題になったビジュアルインパクトの正体は、枚数の多さ以上に、この顔面への貼付が生んだものでした。

田中総監督によると、吉田選手は「朝6時半くらいから自分でペタペタと貼っていた」とのこと。初マラソンへの独自のルーティンとして、テープに精神的な支えを求めていた側面もあるのかもしれません。

他のアスリートも使っている?箱根駅伝・五輪・MLBでの事例

ファイテンのパワーテープは、実は日本の陸上界では非常にポピュラーな存在です。

箱根駅伝の「こめかみファイテン」ブーム

火付け役は駒澤大学の山川拓馬選手。2024年の出雲駅伝でこめかみへの貼付が確認され、全日本大学駅伝での驚異的な追い上げと相まって注目が集まりました。2025年の箱根駅伝(第101回)では12名のこめかみファイテンランナーが確認されています(EKIDEN NEWS調べ)。

この流行の直接的なきっかけは、2024年パリ五輪柔道で金メダルを獲得した角田夏実選手のこめかみ貼りでした。角田選手は中学時代からのファイテン愛用者で、五輪本番でもこめかみに貼って金メダルを獲得。2024年末の箱根駅伝直前合宿で「目と頭がすっきりする」と口コミが広がり、一気に定着しました。

ファイテンは駒澤大学をはじめ11校以上の大学をサポートしています。一方で、青山学院大学や中央大学はライバル企業のコラントッテ(磁気テープ)を使用しており、大学によってメーカーが分かれるのも興味深い点です。

プロ野球・フィギュアスケート・MLBでも

プロ野球では佐藤輝明(阪神)、丸佳浩(巨人)、柳田悠岐(ソフトバンク)らが契約アスリート。フィギュアスケートの羽生結弦はファイテンの最も有名な広告塔であり、ゴルフの松山英樹は自らオファーして契約したほどのファンです。

海外ではMLBで2000年代に大流行。きっかけは大投手ランディ・ジョンソンが2001年の日本訪問時にファイテンを発見し、米国に持ち帰ったこと。2004年ワールドシリーズ優勝のレッドソックスの多くが着用し、最盛期にはMLB選手約300人が使用していました。

吉田響の大阪マラソン2026——初マラソンで何が起きたのか

最後に、100枚のテープとともに走った吉田響選手のレース自体にも触れておきます。

破天荒すぎるレース展開

吉田響選手(23歳、サンベルクス所属)は今回が初マラソン。レース前から「日本記録(2:04:56)を目標に走ります」と公言していました。

そして実際、8km付近でペースメーカーを追い越して単独で飛び出すという常識外れの展開に。中間点を1時間1分54秒で通過し、単純計算で2時間3分48秒ペースという驚異的な速度で独走しました。30km地点では1時間28分7秒と日本記録を上回るペースを維持し、35kmでは通過タイム日本最高記録を叩き出しています。

しかし37km付近で失速。背後から迫ったハッサン(ジブチ)と平林清澄に抜かれ、蛇行しながらゴール。最終結果は2時間9分35秒の34位でした。

失速の原因は「給水失敗」

失速の最大要因は給水の失敗でした。6度のスペシャルドリンクのうち4度(5km・10km・15km・25km)で取り損ねています。初マラソンであのスピードでの給水経験がなかったことに加え、当日のゴール時の気温が約18度と冬のマラソンとしては高温だったことが脱水を加速させました。

ゴール直後に倒れ込み、自力で起き上がれない状態に。車椅子で救護室へ搬送され、しばらく会話ができない状態が続きました。医師の診断は脱水症状。約30〜40分後にようやく首の動きで意思疎通ができるようになったとのことです。

経歴:5歳でペルテス病、箱根2区日本人最高記録の男

吉田響選手は2002年生まれ、静岡県御殿場市出身の23歳。5歳でペルテス病(股関節の骨が壊死する病気)を患い一時歩けなくなった経験を持ちます。

東海大から創価大に編入し、2025年の箱根駅伝2区で日本人歴代最高記録(1時間5分43秒・13人抜き)を樹立。2026年ニューイヤー駅伝でも2区で区間新記録・22人抜きを達成しています。マラソンとトレイルランニングの”二刀流”を志向し、最終目標は2028年ロサンゼルス五輪のマラソンメダルです。

田中総監督は涙ぐみながらこう語りました。「初マラソンで2時間10分を切ったのはいいところ。次回に向けて修正したい」

早大・花田勝彦監督(NHK解説)は「日本のマラソン界を変えてくれるような走り」と評しています。

まとめ

大阪マラソン2026で吉田響選手が全身に貼っていた黒い丸いシールの正体は、ファイテンのパワーテープでした。AIセンサーでも医療用デバイスでもなく、チタンをコーティングしたボディケアテープです。

100枚以上という枚数は通常のトップ選手の約2倍で、特に顔面にまで貼るスタイルは極めて異例。その効果については科学的に完全な決着がついておらず、「効くのか効かないのか」はまさに答えがない話です。

ただ一つ言えるのは、あの100枚のテープとともに35km通過タイム日本最高記録を叩き出した23歳の初マラソンランナーが、日本マラソン界に強烈なインパクトを残したこと。給水の課題さえ克服すれば、次のマラソンではさらに凄いことが起きるかもしれません。

※この記事は2026年2月22日時点の報道・公式コメントに基づいています。

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橙咲 華のアバター 橙咲 華 トウサキ ハナ

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