サーティワンのドライアイスが保冷剤に変わった理由【2026年】

サーティワンのアイスを受け取ったとき、何かが違うと感じた経験はないだろうか。白い煙がない。あの冷えた重みがない。2026年2月から、日本全国のサーティワン店舗でドライアイスが廃止された。違和感の正体は、日本のサプライチェーンが静かに変わり始めているサインだ。

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ある日、サーティワンから銀色の塊が消えた

アイスを受け取り店を出ると、袋から白い煙が上がっていない。レジカウンターにも、あの容器が見当たらなかった。「保冷剤をお入れしました」と店員が言う。銀色の塊ではなく、プラスチックケースに包まれた青いパッドだった。

サーティワンでアイスを買うとき、ドライアイスは当然のものだと思っていた。小さな塊が袋の底に収まり、白い煙を上げながら冷気を閉じ込める。子どものころから変わらない「アイス屋さんの記憶」だった。それが、ある日突然なくなっていた。

同じ感覚を持った人は多い。SNSには「ドライアイスがなくなったの知らなかった」「夏どうするんだろう」という投稿が今も続いている。違和感の正体を追うと、一店舗の話ではなく、日本全体のサプライチェーンが静かに変わりつつある現実が見えてきた。

2026年2月2日、全国一斉で何が起きたか

B-Rサーティワンアイスクリームが公式に切替を発表したのは2026年2月13日だ。ただし実際の運用変更は2月2日から始まっていた。全国の店舗で一斉に、ドライアイスから保冷剤への切り替えが実施された。

公式コメントはこうだ。「ドライアイスの不安定な供給状況を受け、将来的な安定供給と持続的な対応を目的として、アイスクリーム用の保冷にはドライアイスに代わり保冷剤を使用することといたしました」。恒久的な判断であり、ドライアイスに戻す方針はないと明言している。

保冷剤はマイナス18度対応で、無料提供(30分相当)は継続する。「最大2時間の持ち帰りが可能」とも案内されている。ただしSNS上では、この「2時間」という数字に懐疑的な声が多い。「保冷剤10個でもやわやわだった」「夏本番は無理だと思う」といった投稿が2026年4月に入っても続いている。気温が高い日や長距離移動では特に厳しいという声が目立つ。

一方で「手厚く対応してもらえてアイスが固形のまま帰れた」という評価もある。持ち帰り時間・気温・量によって結果が変わるというのが、現時点の実態だ。

この切替より前、2024年7月末にもサーティワンはドライアイスの提供を「30分分のみ」に制限していた。福岡では持ち帰り不能の事例が発生しSNSで拡散された(朝日新聞2024年8月報道)。2026年2月の全面切替は、その延長線上にある。

サーティワンだけじゃない、チェーン横断ルポ

保冷問題はサーティワンに限らない。アイス・スイーツ各チェーンの対応は大きく3パターンに分かれている。

型①:恒久廃止(サーティワン)
2026年2月2日から保冷剤に完全移行。ドライアイスへの回帰はないと公表している。

型②:有料化・単価引き上げ(シャトレーゼ)
シャトレーゼはドライアイスそのものは継続しているが、提供単価を段階的に引き上げてきた。2024年ごろに15分あたり38円から55円に改定したとされる。2026年4月時点での追加改定の公式発表はないが、単価は既に上昇済みだ。無料提供の時代は終わっている。

型③:店舗裁量・状況次第(不二家・コージーコーナー・百貨店・スーパー)
不二家やコージーコーナーは、チェーン全体での一律ルール変更の公式発表はない。各店舗・各地域の仕入れ状況によって、ドライアイスを提供できる日とできない日が混在しているとみられる。百貨店の食品売場も同様で、2026年4月時点での公式サービス変更はアナウンスされていない。いずれも店舗差があることを前提に、来店前に確認するのが安全だ。

コンビニ3社(セブン-イレブン・ファミリーマート・ローソン)については、アイス持ち帰り向けのドライアイス提供サービス自体が限定的で、大手アイスチェーンほどの影響は出ていない。

波及は「アイス専門店」の外にも及んでいる。2026年3〜4月にかけて、一部のケーキ店から顧客に「保冷剤の出荷が制限されている。保冷バッグや保冷剤の持参をお願いしたい」という連絡が届いた事例が確認されている。ドライアイスの代替として保冷剤の需要が急増した結果、今度は保冷剤自体が逼迫しているというのが2026年春の実態だ。

クール便が2年で2回値上げ、通販も変わった

店頭だけではない。通販のクール便料金も、この2年で大きく動いた。

ヤマト運輸は2024年4月1日にクール宅急便の付加料金を55〜110円引き上げた。さらに2025年10月1日には、宅急便120〜200サイズの料金を120〜200円再値上げした。2年で2回の改定だ。佐川急便の飛脚クール便も追随している。日本郵便のチルドゆうパックは冷蔵のみの対応で、冷凍品には使えない。

EC事業者の対応にも変化が出ている。送料無料ラインの引き上げ、温度帯別の個口化(冷凍・冷蔵を別便にすることで割引適用を回避)、クール便の選択制有料化などが広がっている。

ふるさと納税の冷凍返礼品も影響を受けている。クール便コストの上昇分が事業者の負担になるため、発送対応地域の絞り込みや送料別途徴収の事例が出てきている。冷凍アイスや肉類の返礼品を選ぶ際は、発送条件を事前に確認することが重要だ。

Oisix・らでぃっしゅぼーやなどの食材宅配サービスも、冷凍品の送料改定を2024年以降継続的に実施している。「以前は無料で届いていたのに」という利用者の戸惑いは、店頭のドライアイス問題と根を同じくしている。

なぜドライアイスは消えたのか──原料CO2の痩せ細り

ドライアイスは二酸化炭素(CO2)を固体にしたものだ。原料となるCO2は大気から直接回収するのではなく、石油精製・アンモニア製造・エチレン製造といった工業プロセスの「副産物」として取り出される。

日本の液化炭酸ガス(液炭)の年間需要は約80万トンで、ドライアイスにはそのうち約35万トン弱が使われる。供給を支えているのは主に3社だ。エア・ウォーター炭酸、日本液炭、レゾナック・ガスプロダクツである。

この構造が、脱炭素シフトと製油所の統廃合によって揺らいでいる。

2023年10月にENEOS和歌山製油所が操業を停止した。2024年3月には西部石油山口製油所も停止した。製油所が止まると、副生CO2の生産拠点がそのまま失われる。エア・ウォーター炭酸の山陽小野田工場は、西部石油の停止と連動して稼働に支障が生じた。

供給が細る一方、価格は上がり続けている。エア・ウォーター炭酸は2024年4月1日出荷分から液炭・ドライアイスを20〜30%以上値上げした。日本液炭も2025年4月1日から15%以上の値上げを実施している。理由は工場閉鎖・老朽化トラブル・電力コスト上昇・円安と複合的だ。日本経済新聞は「ドライアイスの販売価格が5年で3割上昇した」と報じている。

つまりサーティワンがドライアイスをやめたのは、単なる企業の節約ではない。原料の供給体制そのものが変質しているのだ。

業界は手を打っているのか

業界も手をこまねいているわけではない。ただし解決には時間がかかる。

日本液炭は2026年3月4日、バイオ由来CO2の液化事業化に向けた覚書を締結した。食品・農業由来のバイオガスからCO2を回収・液化する取り組みで、化石燃料依存からの脱却を目指す。エア・ウォーターは2025年10月からグリーン産業ガスの外販を開始した。大阪ガスリキッドとINPEXによる天然ガス副生CO2の活用も進んでいる。

ただし、これらが市場規模で実用化されるまでには5〜10年のタイムスパンが必要とされる。2026年の夏、来年の夏に状況が改善する見通しは現時点では立っていない。構造的な問題が解消されるまでの間、消費者側の対応が求められる。

家庭ができる保冷アップデート3箇条

では、私たちは何をすべきか。「2時間ルール」を前提にした生活への切り替えが、今後の新常識になる。3つの柱を提案する。

第1箇条:保冷ギアを常備する

保冷バッグとハード保冷剤を一式そろえておくことが、今後の「アイス買い物の基本装備」になる。サーモス・象印などの真空断熱タイプの保冷バッグは、外気との熱交換を最小限に抑えるため溶けにくさが段違いだ。価格帯は2,000〜5,000円台が主流。ハード保冷剤は前日から冷凍庫でしっかり冷やしておくと持続時間が伸びる。

2026年4月16日には紀ノ国屋が「まとまる保冷バッグ」Sサイズ(コンパクト折りたたみ・3色展開)を発売した。普段のバッグに忍ばせておくのに向いている。ロフトや無印良品でも保冷バッグの品ぞろえが充実しており、サイズ・素材で選択肢は豊富だ。

第2箇条:買い物動線を直帰にする

アイスを買ったらほかの用事を済ませず、まっすぐ帰る。これが最もシンプルで確実な対策だ。サーティワンで買ってから本屋に寄るというルーティンは、ドライアイス時代には成立した。保冷剤時代は厳しい。気温が高い日ならば、30分でもリスクが出る。アイスを「最後の買い物」にするよう動線を組み直すことが重要だ。

第3箇条:用途に応じて通販へシフトする

大量購入・ギフト用途は通販への移行が現実解になりつつある。シャトレーゼのオンラインショップは冷凍配送に対応しており、まとめ買いならクール便1回あたりのコストを抑えられる。お中元・夏ギフト用途では百貨店ECや定期便を活用することで、店頭で溶けるリスクを回避できる。ふるさと納税のアイス・冷凍スイーツ返礼品は、自宅直送ならば持ち帰り問題は発生しない。店舗で買う場合は、気温が低い午前中に来店するのも一手だ。

この夏、アイスはどう変わるか

2026年の夏は、アイスを取り巻く環境が本格的に試される季節になる。

お中元シーズン(6〜7月)は冷凍ギフトの需要がピークを迎える。クール便コストの上昇分が価格に転嫁される可能性が高く、発送条件を事前に確認する習慣が必要だ。夏休み(7〜8月)は子どもを連れたアイスショップへの来店が増える。「保冷剤では炎天下に対応しきれない」という声は4月時点で既に出ており、猛暑日の対応が最大の焦点になる。

業界の見通しは厳しい。副生CO2の供給体制が短期的に回復する見込みはなく、バイオ由来CO2の実用化も5〜10年先だ。「2時間ルール」は今夏も続く。

ではアイスを楽しめなくなるかというと、そうではない。正しいギアを持ち、動線を組み直し、用途に応じて通販を使えば、夏のアイスを従来どおり楽しむことは十分できる。サーティワンがドライアイスをやめた理由は企業の怠慢ではなく、構造的な資源問題だ。その変化を知った上で、こちら側の対応を更新していくことが問われている。

店頭で受け取った青いパッドの保冷剤は、ドライアイスとは見た目も感触も違う。けれどもアイスの味は変わらない。変わったのは、私たちの側の準備だ。

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橙咲 華のアバター 橙咲 華 トウサキ ハナ

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日韓ハーフ15歳
Kカルチャー&謎を解説
所属:Loveforever
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