「雪道でノーマルタイヤは違反になるの?」
「スタッドレスを履いていれば、どんな雪道でも安心でしょ?」
冬のドライブを計画している方、あるいは突然の雪に見舞われたドライバーの方なら、一度はこんな疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。特に、普段雪が降らない地域に住んでいると、雪道に関するルールは曖昧になりがちです。しかし、その「知らなかった」が、思わぬ事故や交通違反、そして周囲への大きな迷惑につながる可能性があります。
近年、雪道に関する交通規制は大きく変化しており、かつての常識が通用しなくなっています。特に2018年12月から導入された「タイヤチェーン装着義務化」は、多くのドライバーにとって衝撃的な内容でした。この新しい規制では、大雪が降った場合、たとえ高性能なスタッドレスタイヤを装着していても、特定の区間ではタイヤチェーンを装着しなければ通行できなくなったのです。
この記事では、雪道でのノーマルタイヤ走行がなぜ違反なのか、その法的根拠と罰則、そして多くの人が誤解しがちな高速道路と一般道の違いについて、徹底的に解説します。さらに、物議を醸している「チェーン規制」の対象となる全国13区間の詳細や、意外と知られていない「スノーフレークマーク」の意味、タイヤの溝の深さが安全性に与える深刻な影響まで、安全な冬のドライブに不可欠な知識を網羅的に提供します。
SNSで拡散される立ち往生の情報、SNSによる警鐘、そして国土交通省や警察庁が発表する公式情報まで、あらゆる角度から情報を収集・分析し、ドライバーが本当に知りたいこと、知っておくべきことを、まとめ上げました。この記事を最後まで読めば、雪道に対するあなたの認識は一変し、自信を持って安全な冬のドライブに臨めるようになるはずです。
雪道でノーマルタイヤは明確な「違反」!その根拠と罰則とは?
結論から言うと、積雪または凍結した道路をノーマルタイヤで走行することは、道路交通法違反となります。これは「なんとなく危ないから」といった曖昧な理由ではなく、法律および各都道府県の公安委員会が定める規則に基づいています。
法的根拠は道路交通法と公安委員会規則
根拠となるのは、道路交通法第71条第1項第6号です。この条文では、運転者の遵守事項として、道路または交通の状況に応じ、公安委員会が定めた事項を守ることを義務付けています。
道路交通法 第七十一条(運転者の遵守事項)
車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
六 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項
そして、この条文に基づき、各都道府県の公安委員会が「道路交通法施行細則」などで、積雪・凍結時の滑り止め措置を具体的に定めているのです。例えば、東京都の道路交通規則では以下のように定められています。
東京都道路交通規則 第8条(運転者の遵守事項)
(6) 積雪又は凍結により明らかにすべるおそれのある道路において、自動車又は原動機付自転車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること。
つまり、雪が積もったり、路面が凍結したりしている道路で、タイヤチェーンや冬用タイヤといった「滑り止め措置」を講じずに車を運転することは、公安委員会が定めた遵守事項に違反する行為となるのです。
気になる罰則は?反則金と点数
この「公安委員会遵守事項違反」には、当然ながら罰則が科せられます。違反した場合の反則金は以下の通りです。
| 車種 | 反則金 |
|---|---|
| 大型自動車等 | 7,000円 |
| 普通自動車・自動二輪車 | 6,000円 |
| 原動機付自転車 | 5,000円 |
「たった数千円か」と思うかもしれませんが、この違反には反則金以上の重い意味があります。それは、事故を引き起こす危険性が極めて高いということです。反則金を支払えば済む問題ではなく、あなた自身や同乗者、そして周囲の人の命を危険に晒す行為であることを、決して忘れてはなりません。
なお、この違反には交通違反の基礎点数(いわゆる「点数」)は付加されません。しかし、反則金の納付を無視し続けると、刑事手続きに移行し、最終的には5万円以下の罰金が科される可能性があります。
高速道路と一般道の違いは?規制はどこから適用される?
「高速道路は厳しいけど、一般道なら大丈夫だろう」という考えは非常に危険です。雪道に関する規制は、高速道路と一般道の両方に適用されますが、その内容には違いがあります。
「冬用タイヤ規制」と「チェーン規制」
冬の道路で適用される主な規制には、「冬用タイヤ規制」と「チェーン規制」の2種類があります。
- 冬用タイヤ規制: 積雪・凍結路において、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤ、またはタイヤチェーンを装着していない車両の通行を禁止する規制です。これは高速道路だけでなく、必要に応じて一般道でも実施されます。
- チェーン規制: 後述する特定の区間において、大雪が予想される場合に発令されます。この規制が発令されると、スタッドレスタイヤを装着していても、タイヤチェーンを装着しなければ通行できません。
重要なのは、これらの規制は道路の種類(高速道路か一般道か)だけで決まるのではなく、天候や路面状況によって判断されるという点です。高速道路の入り口や、峠道などの主要な国道の電光掲示板で「冬用タイヤ規制」や「チェーン規制」の表示を見たら、速やかに指示に従う必要があります。
「昔は違反じゃなかった」は本当?規制強化の背景
「昔はスタッドレスタイヤさえ履いていれば、雪道で捕まることなんてなかった」と感じるベテランドライバーの方もいるかもしれません。その感覚は、ある意味では正しいと言えます。
雪道での滑り止め措置義務自体は以前から存在していましたが、近年、特に大きな変化があったのは、2018年12月に導入された「タイヤチェーン装着義務化(チェーン規制)」です。
この制度が導入される前は、大雪で立ち往生が発生する危険性が高まると、多くの場合「通行止め」の措置が取られていました。しかし、通行止めは社会経済活動に大きな影響を与えます。そこで、物流などを可能な限り維持しつつ、安全を確保する目的で、「通行止め」の前に、より厳しい「チェーン規制」を実施するという考え方が導入されたのです。
この変更により、「スタッドレスタイヤを履いていれば大丈夫」というこれまでの常識が覆され、大雪時にはチェーン装着が必須となる状況が生まれました。これが、「最近、雪道の規制が厳しくなった」と感じられる大きな理由です。
【スタッドレスでもNG】チェーン規制が発令される全国13区間
2018年12月から導入されたチェーン規制は、ドライバーに大きなインパクトを与えました。この規制は、大雪特別警報や、大雪に対する緊急発表が行われるような、異例の降雪時に発令されます。そして、この規制下では、たとえ4WDの高性能スタッドレスタイヤを装着していても、チェーンを装着しなければ絶対に通行できません。
現在、チェーン規制の対象となる可能性があるのは、全国の高速道路7区間と、国道の6区間、合計13区間です。これらの区間は、過去に大雪による大規模な立ち往生が発生した場所や、急な勾配が続く峠道など、特に注意が必要な場所が選ばれています。
高速道路(7区間)

| 道路名 | 区間 | 都道府県 |
|---|---|---|
| 上信越自動車道 | 信濃町IC ~ 新井PA(上り線) | 新潟県・長野県 |
| 中央自動車道 | 須玉IC ~ 長坂IC | 山梨県 |
| 中央自動車道 | 飯田山本IC ~ 園原IC | 長野県 |
| 北陸自動車道 | 丸岡IC ~ 加賀IC | 石川県・福井県 |
| 北陸自動車道 | 木之本IC ~ 今庄IC | 福井県・滋賀県 |
| 米子自動車道 | 湯原IC ~ 江府IC | 岡山県・鳥取県 |
| 浜田自動車道 | 大朝IC ~ 旭IC | 広島県・島根県 |
国道(6区間)

| 道路名 | 区間 | 都道府県 |
|---|---|---|
| 国道112号 | 西川町志津 ~ 鶴岡市上名川 | 山形県 |
| 国道138号 | 山中湖村平野 ~ 小山町須走御登口 | 山梨県・静岡県 |
| 国道7号 | 村上市大須戸 ~ 村上市上大鳥 | 新潟県 |
| 国道8号 | あわら市熊坂 ~ あわら市笹岡 | 福井県 |
| 国道54号 | 三次市布野町上布野 ~ 飯南町上赤名 | 広島県・島根県 |
| 国道56号 | 西予市宇和町 ~ 大洲市松尾 | 愛媛県 |
これらの区間を冬期に通行する可能性がある場合は、必ずタイヤチェーンを携行し、いつでも装着できるよう準備しておく必要があります。規制が発令されてから慌てて購入しようとしても、近くの店舗では売り切れている可能性が非常に高いです。
「滑り止め措置」の具体的な中身とは?
法律で定められている「滑り止め措置」とは、具体的に何を指すのでしょうか。一般的には、以下の3つのいずれかの方法を指します。
- 冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ)の装着
- タイヤチェーンの装着
- スノーフレークマーク付きオールシーズンタイヤの装着
スタッドレスタイヤ:冬の基本装備
スタッドレスタイヤは、低温でも硬くなりにくい特殊なゴムと、雪や氷をしっかりと掴むための深い溝や細かい切れ込み(サイプ)が特徴です。日本の冬の道路事情に合わせて開発されており、圧雪路や凍結路(アイスバーン)で高い性能を発揮します。
タイヤチェーン:緊急時と規制時の切り札
タイヤチェーンは、タイヤに直接巻き付けることで、駆動力と制動力を大幅に向上させる装置です。金属製、非金属製(ゴムやウレタン)、布製など様々な種類があります。スタッドレスタイヤでも登れないような急な坂道や、前述のチェーン規制が発令された際には必須となります。
注意点として、スプレータイプの滑り止めは、一時的な緊急脱出用としては有効な場合もありますが、チェーン規制で認められている「滑り止め措置」には含まれません。
オールシーズンタイヤ:選択肢の一つだが注意が必要
オールシーズンタイヤは、その名の通り一年を通して使用できるタイヤです。乾いた路面や濡れた路面での性能と、ある程度の雪道性能を両立させています。後述する「スノーフレークマーク」が付いているものであれば、冬用タイヤ規制の対象区間を走行することが可能です。ただし、凍結路での性能はスタッドレスタイヤに大きく劣るため、過信は禁物です。
タイヤの「スノーフレークマーク」とは?その意味と実力

最近、オールシーズンタイヤなどで見かけることが増えた「スノーフレークマーク」。これは、欧州で冬用タイヤとして認められた証であり、正式名称を「スリーピークマウンテンスノーフレーク(3PMSF)」と言います。
このマークは、ASTM(米国試験材料協会)が定める厳しい基準をクリアしたタイヤにのみ表示が許可されます。具体的には、雪上での制動・駆動性能が、基準となるサマータイヤ(夏タイヤ)に比べて一定以上の性能を持つことが証明されています。
スノーフレークマークがあれば万能?
スノーフレークマークが付いたオールシーズンタイヤは、冬用タイヤ規制が実施されている高速道路などを走行することができます。しかし、これはあくまで「最低限の雪道性能を持っている」という証であり、スタッドレスタイヤと同等の性能を持つわけではありません。
特に、日本の冬道で最も危険な凍結路(アイスバーン)における性能は、スタッドレスタイヤに大きく及びません。オールシーズンタイヤは、突然の降雪や、積雪の少ない地域での使用には適していますが、本格的な雪国や凍結が頻繁に発生する地域での使用は、慎重に判断する必要があります。
| 路面状況 | オールシーズンタイヤ | スタッドレスタイヤ |
|---|---|---|
| 乾燥路 | ◎ | △ |
| 湿潤路 | ○ | ○ |
| シャーベット状の雪道 | ○ | ◎ |
| 圧雪路 | ○ | ◎ |
| 凍結路(アイスバーン) | △ | ◎ |
タイヤの溝は命の溝!見落としがちな摩耗の危険性

冬用タイヤを装着していても、そのタイヤが摩耗していれば性能を十分に発揮することはできません。タイヤの溝の深さは、安全性に直結する非常に重要な要素です。
法定限度1.6mmと冬タイヤの限界50%
道路運送車両の保安基準では、タイヤの溝の深さは1.6mm以上と定められています。溝の底にある「スリップサイン」と呼ばれる盛り上がった部分が露出したら、そのタイヤは法的に使用できません。これは夏タイヤも冬タイヤも同じです。
しかし、スタッドレスタイヤには、もう一つ重要な摩耗のサインがあります。それが「プラットフォーム」です。
プラットフォームは、新品時の溝の深さから50%摩耗したことを示すサインで、スリップサインとは別に溝の中に設けられています。スタッドレスタイヤは、このプラットフォームが露出すると、冬用タイヤとしての性能(特に雪を排出する能力や氷上のグリップ力)が著しく低下するため、冬用タイヤとしては使用できなくなります。
新品のスタッドレスタイヤの溝の深さは約10mmなので、プラットフォームは残り溝が約5mmになった時点で現れます。つまり、まだスリップサイン(1.6mm)まで余裕があるように見えても、プラットフォームが露出したスタッドレスタイヤは、もはや雪道で安全に走るための性能を持っていないのです。
偏摩耗の恐怖:一部分でも50%以下ならアウト
「タイヤの溝は全体的にまだ残っているから大丈夫」と安心するのは早計です。タイヤの空気圧が不適切だったり、アライメントが狂っていたりすると、タイヤは均一に摩耗せず、内側だけ、あるいは外側だけが極端にすり減る「偏摩耗」を起こします。
もし、タイヤの一部分でもプラットフォームが露出している、あるいは50%以上摩耗している場合、そのタイヤは冬用タイヤとしての性能を失っていると判断すべきです。その一部分がグリップを失うことで、車は簡単にスリップしてしまいます。
タイヤの点検は、必ず接地面全体を確認し、一部分だけが極端に摩耗していないかチェックする習慣をつけましょう。
オールシーズンタイヤにプラットフォームがない場合は?
一部のオールシーズンタイヤには、スタッドレスタイヤのようなプラットフォームが設けられていない場合があります。この場合、冬用タイヤとしての使用限界を判断するのは難しくなりますが、一つの目安として、やはり新品時の50%程度の摩耗を交換のタイミングと考えるのが安全です。法定限度の1.6mmを基準にするのは、雪道を走行する上ではあまりにも危険です。
チェーン規制時、ノーマルタイヤにチェーン装着はOK?
これは多くの人が抱く疑問の一つです。「チェーン規制」という名前から、「チェーンさえ着ければどんなタイヤでも良いのでは?」と考えてしまうかもしれません。
結論としては、チェーン規制が発令されている区間では、ノーマルタイヤにタイヤチェーンを装着して走行することは可能です。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。チェーン規制が発令されるような状況では、その手前の区間ですでに「冬用タイヤ規制」が実施されている可能性が極めて高いのです。
つまり、チェーン規制区間にたどり着く前に、ノーマルタイヤで走行していること自体が違反となり、通行を止められてしまいます。現実的には、ノーマルタイヤのままチェーン規制区間に進入できるケースはほとんどないと考えて良いでしょう。
冬に雪が降る可能性のある地域へ出かける際は、必ずスタッドレスタイヤなどの冬用タイヤを装着した上で、万が一のチェーン規制に備えてタイヤチェーンを携行するのが、唯一の正解です。
SNSが伝えるリアルな恐怖:他人事ではない立ち往生
近年、大雪のたびにSNSでトレンドになるのが「ノーマルタイヤ」「立ち往生」といったキーワードです。2026年1月にも、山陽自動車道でノーマルタイヤの車が立ち往生し、大規模な渋滞を引き起こした事例が大きく報じられました。
SNS上では、こうした状況に対する厳しい意見が数多く見られます。
「降雪の可能性があるのに冬用タイヤを履かないのは論外。スタックしてから警察に電話してどうするの?」
「たった一台の無責任な車のせいで、何時間も渋滞に巻き込まれる人の身にもなってほしい」
「極寒の夜に車内に閉じ込められたら、命に関わる問題だ。これは人災だ」
これらの声は、決して大げさなものではありません。一台の立ち往生が、後続車を次々と巻き込み、数キロ、時には数十キロに及ぶ長大な渋滞を引き起こします。救急車や消防車といった緊急車両の通行も妨げられ、人命救助活動に支障をきたすことさえあります。
雪道でのノーマルタイヤ走行は、単なる交通違反ではなく、多くの人の時間と安全を奪う、極めて反社会的な行為であるという認識を持つことが重要です。
まとめ:安全な冬のドライブは、正しい知識と準備から
この記事では、雪道でのノーマルタイヤ走行の危険性と違法性、そして近年厳格化された交通規制について、多角的に解説してきました。
最後に、安全な冬のドライブのために、ドライバーが心に刻むべき重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 積雪・凍結路でのノーマルタイヤ走行は明確な法律違反であり、罰則の対象となる。
- 「冬用タイヤ規制」は一般道でも実施され、「チェーン規制」はスタッドレスタイヤでもチェーン装着が必須となる。
- 全国13区間のチェーン規制対象区間を事前に確認し、通行する際は必ずチェーンを携行する。
- スタッドレスタイヤは、残り溝が50%(プラットフォーム露出)になったら冬用タイヤとして使用できない。
- タイヤの偏摩耗にも注意し、一部分でも摩耗が進んでいれば交換を検討する。
- ノーマルタイヤでの雪道走行は、自分だけでなく周囲の安全を脅かす重大な危険行為であると認識する。
冬のドライブは、美しい雪景色を楽しめる素晴らしい体験です。しかし、それは万全の準備があってこそ。正しい知識を身につけ、適切な装備を整えることが、あなたとあなたの大切な人を守るための第一歩です。この冬が、誰にとっても安全で楽しい季節になることを願っています。

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