2026年2月5日、チラズアート(Chilla’s Art)の新作『UMIGARI | ウミガリ』がSteamで発売されました。価格は1,500円(税込)で、銛漁と海洋探索を軸にした一人称視点のホラーアドベンチャーです。
公式の推定プレイ時間は2〜4時間ですが、じっくり探索すれば5時間以上遊べるボリュームです。2種類のエンディングを迎えた後、多くのプレイヤーが同じ疑問を抱いたのではないでしょうか。「あの結末は結局どういう意味だったのか」「海に沈んだ学校は何を表していたのか」「みうなの正体は?」――この記事では、そうしたウミガリのストーリーにまつわる謎を、エンディングの具体的な解説とともに徹底的に考察していきます。
※本記事にはウミガリのストーリーに関する重大なネタバレが含まれます。未クリアの方はご注意ください。
『ウミガリ』の基本情報と世界観【ネタバレなし】

まずは作品の基本情報を簡潔に整理しておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | UMIGARI|ウミガリ |
| 開発・販売 | Chilla’s Art(チラズアート) |
| 発売日 | 2026年2月5日 |
| 価格 | 1,500円(税込) |
| ジャンル | ホラーアドベンチャー(一人称銛漁) |
| 対応機種 | PC(Steam / Steam Deck) |
| プレイ時間 | 約2〜4時間(公式)/じっくり派は5時間以上 |
| エンディング数 | 2種類 |
チラズアートといえば、『夜勤事件』のコンビニや『パラソーシャル』のマンションなど、狭い閉鎖空間を舞台にした作品が代名詞でした。しかし本作の舞台は、霧に覆われた広大な海。半ば水没した日本の街並みを小型漁船で巡りながら、銛で奇妙な魚を獲り、資金を集めて船を強化していくという、これまでにないゲームプレイが特徴的です。
ホラー要素はチラズアート作品としてはかなり控えめ。ジャンプスケアや追いかけ回される恐怖はほとんどありません。その代わり、どこか人間めいた魚たち、水没した建造物に漂うノスタルジー、そして理由のわからないまま世界が変容している「不条理さ」が、静かに精神を侵食してきます。
海洋釣りホラーというジャンルでは『DREDGE』がよく引き合いに出されますが、両者のテイストはかなり異なります。DREDGEがクトゥルフ神話的な「宇宙的恐怖」を描くのに対し、ウミガリはどこまでもJホラー的。霧に霞む海の向こうに、伊藤潤二や楳図かずおの漫画を思わせるシュールで湿度の高い世界が広がっている――そんな作品です。
ストーリー全体のあらすじ【ネタバレあり】

※ここからネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。
物語は、主人公が小さな砂浜の島「ハジマリノ島」で目を覚ますところから始まります。島には魚屋がひとりおり、獲った魚を買い取ってくれるとのこと。主人公は銛で魚を獲り、燃料を買い、島を出発します。
近くの神社にはセーラー服姿の少女「みうな」が倒れています。彼女によれば、この世界にかけられた「呪い」を終わらせるには、神社の壁にはめる石板が3つ必要だとのこと。こうして、石板を求めて各海域を巡る旅が始まります。
主人公は半ば水没した6つの海域――ハジマリノ島、キミョウナ高校、アクオンモール、アヤシゲナドーム、オソロシ駅、ナゾメイタ都市――を順に攻略していきます。各海域には個性的な「人間」たちが暮らしており、彼らの依頼をこなすことで鐘を入手し、新たな海域への道を切り拓いていく構造です。
探索を進めるにつれ、この世界の異常さが浮き彫りになっていきます。学ランやセーラー服を着た魚、エラが人間の手になっている魚、そして喋る魚。各海域に点在する喋る魚は主人公に「君は魚だ」と語りかけてきます。さらに、人間のように見えるキャラクターたちもどこか様子がおかしく、「自分は人間ではない」ことを匂わせる発言を繰り返します。
3つの石板をすべて集めて神社にはめると、光が遠くを指し示します。みうなとともに最果ての洞窟にたどり着くと、そこには傷だらけの巨大なクジラが浮かんでいました。みうなはそのクジラを「パパ」と呼びます。このクジラこそが、世界を変えた張本人――「人間と魚を入れ替える呪い」をかけた、神にも等しい存在だったのです。
全エンディング解説

ウミガリにはエンディングAとエンディングBの2種類が存在します。どちらもクジラとの対話における選択肢で分岐する仕組みです。
エンディングA(バッドエンド)の条件と内容
洞窟のクジラは主人公にいくつかの問いを投げかけてきます。
「あなたが出会った人間たちは、悪そのものだったか?」 「人間に正解はあるのか?」 「人間は完璧な存在であるべきなのか?」 「一度失敗したものはやり直すことは許されないのか?」 「私の過ちを償うには、もう遅すぎるのか?」 「あなたは、この呪いを解くべきだと思うか?」
これらの質問のどこかで「はい」と答えると、エンディングAへ進みます。最初の質問に「はい」と答えた場合は「本当によろしいですか?」と確認が入り、それでも「はい」を選ぶことで確定します。
エンディングAでは、クジラが呪いを解き、世界を元に戻します。つまり、魚の姿になっていた人間は人間の体に戻り、人間の姿をしていた魚は魚に戻されることになります。しかしそこに描かれる光景には救いがありません。大部分が水没した世界で人間の体に戻されても、生存は困難。画面に映し出される人影は、もはや動いているようには見えません。「元に戻す」という選択が、かえって最悪の結果を招いたことが示唆されるエンディングです。
なお、エンディングAを見終えると「あの選択で本当によかったのだろうか…」というテキストが表示され、クジラとの問答シーンに戻してもらえる親切な設計になっています。
エンディングB(トゥルーエンド)の条件と内容
すべての質問に「いいえ」と答え続けると、クジラは最後に「人間とは何だ?この世界はどうしたら良くなる?」と問いかけてきます。ここで「共に生きるために、魚だった人間に考える力を与えて」と答えることで、エンディングBに到達します。
エンディングBでは、呪いは解かれません。人間と魚が入れ替わった世界はそのまま維持されます。しかしクジラの力によって、魚から人間に変わった存在たちに「知能」が与えられます。その後のシーンでは、みうなが学校で元魚たちに「共食いはしてはいけない」「一緒に生きていこう」と教える姿が描かれます。教室には鶏卵のようなものが配られる場面もあり、動物はどこかに存在していることが示されています。最後はハジマリノ島を背景にエンドロールが流れ、物語は幕を閉じます。
2つのエンディングの違いが示すもの
エンディングAは「過去に戻す」選択であり、エンディングBは「現状を受け入れて前に進む」選択です。興味深いのは、ハッピーエンドのように演出されているエンディングBにも、本当にこれが正解なのかという疑問が残る点でしょう。
入れ替わりは解除されていないため、元の人間たちは魚のまま。ほぼ水没した世界で人間の体を維持することが果たして幸福なのかも疑わしい。一方で、エンディングAは明確に「失敗」として描かれている。この作品は「どちらを選んでも完全な正解はない」というテーマを突きつけてきます。それはまさに、チラズアート作品に通底する「逃れられない構造」そのものと言えるでしょう。
ストーリーの謎を徹底考察

ここからは、ウミガリのストーリーに残された謎について、根拠を示しながら深く掘り下げていきます。
タイトル「ウミガリ(海狩り)」に込められた意味
「ウミガリ」は文字通り「海で狩りをする」ことを意味しているように見えます。実際、ゲームの主要なプレイ体験は銛で魚を獲ることです。しかし、ストーリーの全貌を知った後に振り返ると、このタイトルには別の意味が浮かび上がってきます。
主人公が銛で獲っている「魚」は、元々は人間だった存在です。つまり、主人公は知らず知らずのうちに「元人間を狩っていた」ことになります。キービジュアルに描かれた「セーラー服を着た魚の頭に突き刺さった銛」は、まさにこの残酷な構図を象徴していると考えられます。
さらに、チラズアート作品は一貫して「人間の業」をテーマにしてきました。ウミガリにおける「狩り」は、食物連鎖の頂点に立つ者が弱い者を搾取する構造――つまり人間社会そのものの暗喩ではないでしょうか。魚屋が「なんとなく人間が憎かった」と語ったように、元魚である主人公たちが無意識に元人間を狩り続けるという構図は、「立場が変わっても暴力の連鎖は止まらない」という痛烈なメッセージを含んでいる可能性があります。
海に沈む「学校」の謎
ウミガリで多くのプレイヤーが強い印象を受けるのが、海域「キミョウナ高校」に存在する水没した学校です。なぜ海の真ん中に学校が沈んでいるのか。その答えは、この世界の成り立ちと密接に結びついています。
この世界はクジラの呪いによって人間と魚が入れ替わった世界です。かつて人間が暮らしていた街――学校も、モールも、駅も、ドームも――はすべて水没し、魚だった存在たちが人間の姿でその廃墟に暮らしているという構図になっています。学校の中を泳ぐ学ランやセーラー服の魚は、かつてそこに通っていた生徒たちの成れの果てだと考えるのが自然でしょう。
しかし「学校」にはもう一つの象徴的な意味があるのではないでしょうか。エンディングBで、みうなが元魚たちに「共食いをしてはいけない」と教える場所もまた「学校」です。序盤の水没した学校が「失われた秩序」の象徴だとすれば、エンディングBの教室は「秩序の再生」の象徴。学校という場所が、物語の始まりと終わりを対称的に結んでいるわけです。
みうなの正体と役割の考察
セーラー服姿で神社に倒れていた少女みうな。彼女はクジラを「パパ」と呼んでおり、呪いをかけた神的存在であるクジラの娘にあたる存在だと考えられます。
みうなは主人公に石板集めの目的を伝え、物語を導く案内役として機能しています。船の縁から海に落ちて一時離脱するものの、最終海域「ナゾメイタ都市」で再び姿を現し、巨大陰サメの倒し方を知っているなど、この世界の仕組みに精通した振る舞いを見せます。
注目すべきは、みうなが「知能の高い個体」として描かれている点です。この世界では魚から変化した人間の多くが知能不足に苦しんでいますが、みうなはクジラの血を引くためか、最初から高い知性を持っています。エンディングBで教師として共存の道を説く役割を担うのも、彼女が「二つの世界の架け橋」として設計されたキャラクターだからでしょう。
一方で、アクオンモールではみうなに擬態したタコが登場するなど、彼女の存在自体がこの世界で特異であることが暗示されています。クジラの娘でありながら人間の姿を取るみうなは、「人間と魚の境界」を体現する存在とも言えます。
「海」は何を象徴しているのか
ウミガリの世界は、現実の地理とは似て非なるものです。「ハジマリノ島」「キミョウナ高校」「アクオンモール」「アヤシゲナドーム」「オソロシ駅」「ナゾメイタ都市」といったエリア名は、どれも意味深な日本語になっています。
この海は現実世界が水没したものなのか、それともクジラの呪いが作り出した精神的な空間なのか。ゲーム内では明確な説明はされていません。ただし、街並みやインフラ(ガソリンスタンド、観覧車、コインランドリー、駅など)がそのまま残っている点を考えると、かつて実在した日本の街が呪いによって水没した世界であると解釈するのが妥当でしょう。
霧に覆われた海、奇妙な魚、繰り返し行われる狩り。これらの要素は、チラズアートが過去作品で描いてきた「閉鎖空間」の変奏と見ることもできます。コンビニ(夜勤事件)やマンション(パラソーシャル)と同じように、ウミガリの海もまた「逃げ場のない場所」です。広大に見えて、実際には霧とウミガーに阻まれてどこにも逃げられない。広さの中にある閉塞感こそ、この海が象徴するものではないでしょうか。
他のチラズアート作品との共通テーマ

チラズアートの作品群には、一貫して「日常に潜む恐怖」と「社会の構造的な闇」が描かれています。『夜勤事件』では深夜のコンビニという日常空間が恐怖の舞台になり、『パラソーシャル』では配信者とファンの歪んだ関係性が描かれ、『誘拐事件』では社会の裏側に潜む犯罪が題材になりました。
ウミガリはその系譜にどう位置づけられるのでしょうか。本作が描いているのは、「立場が逆転しても繰り返される暴力の構造」だと考えられます。人間に嫌気が差したクジラが呪いをかけても、入れ替わった先で同じ問題(共食い、搾取、争い)が発生する。これは過去作品が描いてきた「逃れられない構造」をスケールアップしたテーマと言えるでしょう。
また、ゲーム内には映画化された『夜勤事件』のポスターが隠し要素として登場するなど、ファンサービスも見られます。過去作品をプレイした人であれば、各海域のキャラクターたちの「どこか歪んだ善意」に、チラズアート作品に共通する人間描写の系譜を感じ取れるはずです。
プレイヤーの間で議論されている考察ポイント

発売から約1週間が経過し、SNSやSteamレビューではさまざまな議論が交わされています。
特に意見が分かれているのが「主人公が魚を狩り続けていた動機」です。魚屋は「なんとなく人間が憎かった」と語っていますが、主人公がラストで人間を肯定する選択肢を選べるのは不自然ではないかという指摘があります。「元人間だと理解した上で、金のために漁をしていた」とすれば、それはある意味で最も人間らしい行為なのかもしれません。
また、「ウミガー」の正体も未解明の謎として話題になっています。Yahoo!知恵袋でも質問が寄せられるほどで、呪いの副産物なのか、クジラが意図的に配置した「門番」なのか、プレイヤーの間でまだ結論は出ていません。
エンディングBが本当にトゥルーエンドなのかという点にも議論の余地があります。ハッピーエンド風の演出がなされているものの、呪いは解かれておらず、元人間は魚のまま。「どちらのエンディングにも本当の救いはない」と読み取る声も少なくありません。
これらの謎について、あなたはどう考えますか?
まとめ
『ウミガリ』は、一見すると銛漁シミュレーションに見えながら、その奥にチラズアートらしい重層的な物語が隠されたストーリーでした。人間と魚の入れ替わりという設定、どちらを選んでも完全な正解が存在しないエンディング、そして「狩る」という行為に込められた多義的なメッセージ。
考察に「正解」はありません。プレイヤーそれぞれが旅の中で出会ったキャラクターや風景から、自分なりの答えを見つけるのがこの作品の醍醐味でしょう。チラズアートが次にどんな世界を見せてくれるのか、その期待を胸に、霧の海の余韻に浸りたいところです。

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